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市長のコラム

無駄  (平成21年9月11日)

 民主圧勝、自民惨敗。各紙に「歴史的」の文字が躍り、社説の書き出しには、「オセロゲームのよ うな大逆転劇だった。」とあるように、選挙区において一人を選出する小選挙区制の特徴が、今回も大きく表れる結果となりました。
 国民の大きな期待を受けて誕生した新政権は、マニフェストに掲げた政策を実行していくことになるわけですが、その財源については、必ずしも明確になっているわけでありません。説明では、「脱官僚」、すなわち「政治主導」により予算の組替えを行うことで、徹底的に「無駄」を廃し、具体的には9兆円もの財源を捻出するとしています。これに対し、今や野党となった自民党議員からは、「早くそのマジックを見せてほしい。」という声さえ聞こえてきます。このように、今回の選挙で論点の一つになった「税金の無駄使い」ですが、「何が無駄か」を見極める基準づくりは左様に簡単なことではありません。
 ところで話は変わりますが、先日うれしい報せが届きました。私たちが取組を進めている南方熊楠の顕彰活動が、栄えある第31回「サントリー地域文化賞」を受賞することになりました。このことは、昭和62年に現在の「南方熊楠顕彰会」の前身である「南方熊楠邸保存顕彰会」が発足して以来、今日まで実に幅広い活動を続けてきた関係各位の努力の賜物であると感じています。
 賞の贈呈式は去る8月5日に東京で行われ、市長の故をもって顕彰会会長を務めている関係上、受賞者代表として晴れの舞台に登壇させていただきましたが、改めて「賞」の重さを実感いたしました。そして、当日の式次第は順調に贈呈式から交流会へと進み、いよいよ終了といった頃、「このあと、受賞者の皆さんは、歴代受賞者との懇親会がございますので会場を移動してください。」とのアナウンスが流れました。案内されるままに別室に入ると、30〜40名の参加者によるパーティーが始まろうとしています。(そうか)本賞は今年で31回を数え、受賞者数も本年度の5団体を加えると169団体にも上るのですから、40名程度の歴代受賞者が集まるのも当然といえば当然のことです。しかしながら、毎年歴代の受賞者同士が、その後もこうして交流を続けているのには、「すごいなぁ。」と感心しつつ各自のスピーチを聞きながら過ごしました。
 楽しい時間が過ぎるのは早いもので、いよいよ最後のスピーチです。サントリー株式会社(現サントリーホールディングス株式会社)で副社長、相談役、顧問を歴任されたあと、日本芸術文化振興会の理事長を務められた津田和明さんが紹介されました。『皆さんは全国各地において、地域文化を継承するため、永年にわたりこのような「無駄」な活動を、飽くこともなくこつこつと続けてこられました。敬意を表します。私は、「サントリー」という会社で「お酒」という「無駄なもの」を永年つくり続けてまいりました。「生きる」ためだけなら「お酒」は必要ありません。しかし、動物の中で「お酒」をたしなむのは「人間」だけです。人間らしく生きるための「無駄」をこれからも大切にしていきたいと思います。』要約すれば、このような内容だったと記憶していますが、会場は大きな拍手に包まれました。このときばかりは、お酒に無縁の私でも、「飲むんだったら、サントリーのウイスキーやなぁ。」と感じ入り、無意識のうちに拍手する手に力が入っていました。
 地域文化の価値について、(動物的に)生きるのであれば「無駄なもの」とユーモアたっぷりに表現しながら、一方で人間らしく生きるためには大変「有益な無駄」とする、実に分かりやすいスピーチでした。「無駄を廃す」ことに異論はありませんが、効率性ばかりが優先され、「有益な無駄」まで排除されることのないように願いたいものです。
 いずれにしても、今回「サントリー地域文化賞」受賞の機会をいただき、改めて「心の豊かさ」や「地域に暮らす価値」の創出が、まちづくりの大切な柱の一つであることを、再認識させられた思いがします。

 平成21年9月11日

shomei   

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最終更新日:2022330