田辺市HOME > 監査委員事務局 > 令和3年度 一般会計及び特別会計決算審査の概要

令和3年度 一般会計及び特別会計決算審査の概要

決算審査の概要

 この決算審査は、田辺市監査基準(令和2年田辺市監査委員告示第1号)に準拠している。

 令和3年度の一般会計及び特別会計を合わせた総決算額は、歳入総額737億4,561万7,294円、歳出総額707億3,253万9,011円となり、前年度に比べ歳入は7.41%減、歳出も8.40%減の決算となっている。

 令和3年度の特筆すべき事項として、前年度から続く新型コロナウイルスの感染拡大による多大な影響を受けての財政運営となっている。

 収支の状況を実質収支でみると、一般会計は23億311万6,845円の黒字、14の特別会計の合計は2億9,579万8,259円の黒字となり、一般会計と特別会計の総計では25億9,891万5,104円の黒字決算となっている。基金の残高は、前年度より18億6,109万5,117円増の261億5,173万8,601円となっている。

 一般会計の歳入総額503億2,756万6,542円を構成比率でみると、自主財源は28.42%(前年度24.05%)、依存財源は71.58%(同75.95%)となっている。自主財源の根幹をなす市税収入は、前年度に比べ394万5,423円(0.05%)減の82億4,376万1,612円となっている。一般会計の歳出総額476億1,028万6,518円を構成比率でみると、消費的経費は59.59%(同63.20%)、投資的経費は12.91%(同15.63%)、その他の経費は27.50%(同21.17%)となっている。

 令和3年度の普通会計における財政状況を財政分析の指標からみると、財政上の能力を示す財政力指数は0.374(前年度0.395)であり、財政構造の弾力性を示す経常収支比率は92.62%(同97.99%)で、前年度より5.37ポイント低下(改善)している。また、収入の安定性を推測する経常一般財源比率は、98.07%(同96.18%)と前年度より1.89ポイント上昇している。地方債の償還に充てた一般財源の割合を示す公債費比率は7.1%(同8.1%)で前年度より1.0ポイント低下(改善)、実質公債費比率は8.6%(同8.8%)で前年度より0.2ポイント低下(改善)して、地方債の発行に県知事の許可が必要となる18%を大きく下回っている。

 一般会計と特別会計の収入未済額の総計は8億5,096万5,423円で、前年度に比べ1億9,245万6,861円(18.44%)の減となっている。市税や国民健康保険税をはじめ数々の使用料においては、納付指導の他、口座振替の推進、コンビニエンスストア並びにスマートフォンアプリでの納付など納付環境の利便性向上を図り、特に市税等では納税推進員による電話督励、夜間延長窓口の開設、さらには和歌山地方税回収機構への税債権の移管や差押えなどの取組を進めていることで、収納率向上に一定の成果が表れてきている。

 しかしながら、税債権以外にも使用料等の債権も含めた収入未済額は多額であるので、コロナ禍による支払猶予などの納付相談も踏まえながら、負担の公平性を保つこと、また貴重な財源確保の面からも、納付意識の高揚に努めるなどし、収納率の向上になお一層努力されるよう要望するものである。加えて、収入未済額の管理、不納欠損の処理といった債権管理についての重要性が増していることから、債権管理条例の制定を望むところである。

 ところで、本市では、近年、安定した財政状況を継続されているが、普通交付税の合併特例措置が令和2年度をもって終了し、令和3年度から一本算定とされている。さらに、合併特例事業債も数年先には発行可能額の全額を借り入れる見込みである。このように財源の見通しが定かでない中、有利な地方債を活用したり、森林環境譲与税等の幅広い活用を検討したりするなど財源確保に努められたい。

 この森林環境譲与税の本市への交付額は、全国屈指であり注目されているところである。市は、その活用方法について、基本理念や将来像といった本市が目指すべき森林や山村の姿などを掲げた「田辺市森づくり構想」を策定された。今後の具体的な取組をどのように展開していくのか期待したい。

 令和3年度の大型事業として、前年度から引き続き、新庁舎整備事業、津波避難タワー整備事業が実施された。ここ数年来で実施されてきた数々の大型ハード事業の多くが前年度で完了し、今後はハード事業からソフト事業への軸足の転換が進められていく中、次はこれらの事業で整備された施設を活かしたまちづくりが問われることになるものと思われる。さらに、現市庁舎の跡地利用を含めた中心市街地の活性化に資するよう田辺湾岸エリアを見据えた「田辺ONE未来デザイン」、脱炭素社会の実現に向けた地域脱炭素の推進、自治体DX、社会保障費の増加、公債費の負担、産業振興、防災・減災対策、公共施設や設備の更新など多くの重要課題に対応するため多額の財政需要が見込まれるものと考えられる。

 前年度から続くコロナ禍の下、日常生活において様々な活動が制約されるなど、本市においても市民生活に多大な影響を受けている。観光業や飲食業などの業績の落込みからの回復の見通しが立たず、令和3年度においても開催されるはずであった数々のイベントが中止若しくは延期を余儀なくされた。

 一方、国は令和3年11月「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を閣議決定し、子育て世帯への臨時特別給付金や住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金をはじめ、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の枠組みを活用し、地方の実情に応じた取組などへの支援を打ち出した。市としても、前年度から財源を繰越して実施したものを含め、個人・世帯向けの生活支援、事業者向け支援や学校教育支援、地域活性や観光の需要喚起、さらに感染防止に向けた対応などの事業にその財源を十二分に活用された。令和3年度内に事業が終了しないものについては、翌年度に財源を繰り越して事業を実施している。交付金を活用して実施した数々の事業に係る効果についての検証は事業の完了後になるものと思われるが、市民福祉の増進、及び地域経済を支える施策と感染拡大防止対策との両立を図り、より大きな効果を上げられるよう望むところである。

 今後の事業の実施に当たっては、経済性、効率性、有効性等について検証し、限られた財源の有効かつ効率的な活用を更に図られたい。特に、公共施設や設備の更新時期について、近い将来ほぼ一斉に迎えるものと推測されるが、存続あるいは廃止を適正に判断されたい。改修して存続させるのであれば、計画性を持って行い、売却するのであれば、民間活用を図り地域活性化に資するよう進められたい。そして、「第2次田辺市総合計画」をはじめとする各計画に掲げた政策の達成を目指すとともに、「田辺市人口ビジョン」と「第2期田辺市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を踏まえ、中長期的かつ統一的な展望に基づいた安定的な行財政の運営を推進し、市政発展と市民福祉の増進に努められるよう望むものである。

 ところで、市は、総務課内にコンプライアンス推進係を設置し、公務員倫理の確立をするべく、組織としてさらに自浄能力を発揮するため、綱紀粛正の徹底、公金取扱の厳格化について重点的な取組をされている。職員全員が、公金管理のあり方や補助金の交付事務、加えて各課等で管理している団体のいわゆる準公金の管理のあり方を検証し、厳格なチェック体制を確立させ徹底し、公務員としての自覚を持って職務に専念されたい。また、職員が公務外で、地域などでの団体の業務を担当していても、公務員としての自覚を持って、日常の職務と同じものとして取り組むことで、市民からの信頼につながるものと考える。市としての取組を引続き見守りたい。

 この一連の取組は、平成29年改正の地方自治法での内部統制に関する方針の策定及び内部統制体制の整備に通じていると思われる。内部統制制度の導入は、現行では都道府県知事及び指定都市の市長に義務付けられており、指定都市以外の市町村の長については努力義務とされているが、衆議院総務委員会及び参議院総務委員会の改正法に対する附帯決議では、指定都市以外の市町村の長についても、内部統制に関する取組を積極的に推進すべきとされている。市全体として、制度の導入に向けて機運を高め、導入に向けての具体的な取組を望むところである。

 最後に、昨今の厳しいコロナ禍が続いている状況の下であるが、これまで以上にガバナンスの構築、職員のコンプライアンスの推進、リスク管理等を徹底し、各担当業務や管理体制を十分に理解した上で今後職務に精励されることを強く希望する。

 そして、ウィズコロナ・アフターコロナにおける取組を進めつつ、当市においては人口減少が進んでいる中で、どのように将来につなげていくのか職員一人一人が展望を持って、先手を打てるような準備を進めてもらいたい。田辺市のキャッチフレーズでもある「未来へつながる道 田辺市」を実現できるよう努力されることを期待する。

このページに関するお問合せ先
田辺市 監査委員事務局 お問い合わせフォームこのリンクは別ウィンドウで開きます
〒646-8545 和歌山県田辺市新屋敷町1番地 TEL 0739-26-9944 FAX 0739-22-5310
最終更新日:2023118