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令和元年度一般会計及び特別会計決算審査の概要

決算審査の概要

 令和元年度の一般会計及び特別会計を合わせた総決算額は、各会計の「実質収支に関する調書」によると、歳入総額680億2,194万9千円、歳出総額663億3,666万3千円となっており、前年度に比べ歳入は1.64%増加、歳出も1.50%増加の決算となっている。

 収支の状況を実質収支でみると、一般会計は17億138万3千円の黒字、15の特別会計の合計は    2億4,508万9千円の赤字となっているが、一般会計と特別会計の総計では14億5,629万4千円の黒字決算となっている。基金の残高は、前年度より955万9千円増の241億298万8千円となっている。

 一般会計の歳入総額456億357万2千円を構成比率でみると、自主財源は31.77%(前年度31.66%)、依存財源は68.23%(同68.34%)となっている。自主財源の根幹をなす市税収入は、市民税(個人、法人)、固定資産税、軽自動車税、市たばこ税、入湯税が増加し、都市計画税が減少しており、前年度に比べ2億4,185万9千円(2.98%)増の83億5,262万4千円となっている。一般会計の歳出総額436億7,319万7千円を構成比率でみると、消費的経費は58.06%(前年度57.28%)、投資的経費は15.34%(同15.83%)、その他の経費は26.60%(同26.90%)となっている。

 令和元年度の普通会計における財政状況を財政分析の指標からみると、財政上の能力を示す財政力指数は0.377(前年度0.376)であり、財政構造の弾力性を示す経常収支比率は97.78%(同96.66%)で、前年度より1.12ポイント上昇している。また、収入の安定性を推測する経常一般財源比率は、97.70%(同96.13%)と1.57ポイント上昇している。地方債の償還に充てた一般財源の割合を示す公債費比率は9.0%(同9.0%)で前年度と同じ、実質公債費比率は8.7%(同8.1%)で0.6ポイント上昇しているが、地方債の発行に県知事の許可が必要となる18%を大きく下回っている。

 一般会計と特別会計の収入未済額の総計は11億4,365万7千円で、前年度に比べ1億531万1千円(8.43%)の減となっており、納付指導、口座振替の推進、コンビニエンスストアでの納付のほか、市税等では夜間延長窓口の開設など納税環境の整備や納税推進員による電話督励、和歌山地方税回収機構への税債権の移管や差押えなど、収納率向上への取組に一定の成果が表れてきている。また、令和元年度からは、市税や国民健康保険税等において、スマートフォンのアプリで納付ができるようになり、納税者の利便性向上を図り、更なる収納率向上への取組を進めている。

 しかしながら、税債権以外にも使用料等の債権も含めた収入未済額は多額であるので、負担の公平性を保つこと、また貴重な財源確保の面からも、納付意識の高揚に努めるなどし、収納率の向上になお一層努力されるよう要望するものである。加えて、収入未済額の管理、不納欠損の処理といった債権管理について、民法改正等法令への速やかな対応も含め、条例の策定を望むところである。

 一方、市では平成29年7月に今後10年間のまちづくりの指針となる「第2次田辺市総合計画」を策定し、基本理念として「一人ひとりが大切にされ、幸せを実感できるまちづくり」を継承し、将来像を「人と地域が輝き、未来へつながるまち田辺」として描き、基本方向を「人」、「活力」、「安全」、「希望」、「安心」、「快適」を軸として、「連携・協働・参画」、「地域コミュニティ力」、「健全な行財政運営」、「広域連携」の計画推進を示している。将来像の実現に向けて、重点プロジェクトとして「人材育成プロジェクト」を基本に「価値向上プロジェクト」、「発信・交流プロジェクト」、「強靭化プロジェクト」、「暮らし充実プロジェクト」を位置付けしている。

 令和元年度は、第32回全国福祉祭(ねんりんピック)和歌山大会の開催やプレミアム付商品券事業といった数々の事業を進められるとともに、前年度から引続き、景観まちづくり刷新事業をはじめ、扇ヶ浜公園整備事業、新庁舎整備事業、斎場建設事業、紀南環境広域施設組合最終処分場整備事業、防災無線整備事業など数多くの大型プロジェクトも進められた。これ以外にも、社会保障費の増加、多額の公債費負担に加え、産業振興、防災・減災対策、公共施設の更新など多くの重要課題に対応するため多額の財政需要が見込まれるものと考えられる。

 今後の事業の実施に当たっては、経済性、効率性、有効性等について検証し、限られた財源の有効かつ効率的な活用を更に図られたい。そして、「第2次田辺市総合計画」をはじめとする各計画に掲げた政策の達成を目指すとともに、令和元年度に見直された「田辺市人口ビジョン」と「第2期田辺市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を踏まえ、中・長期的かつ統一的な展望に基づいた安定的な行財政の運営を推進し、市政発展と市民福祉の増進に努められるよう望むものである。

 ところで、平成30年5月にイセエビの放流及び海面環境保全事業に係る補助金において不適正な会計処理が発覚したことで、平成29年度一般会計歳入歳出決算が議会において不認定となり、さらに、議会に対し講じた措置の報告もないまま、平成30年度のイセエビ放流事業等を実施していたこと、調査中の放流事業に対し補助金を支出していたことから、平成30年度一般会計歳入歳出決算についても議会において不認定となり、2年連続で一般会計歳入歳出決算は不認定とされた。

 市は調査専任職員を配置し、全容の解明に向けて膨大な数に及ぶ証拠書類の調査を進め、担当課では、事業補助金交付要綱を整備し、補助対象を明確化するなどの取組をしてきた。令和元年12月に「水産増養殖・水産振興事業補助金等の不適切な会計処理事案に係る調査及び措置に関する報告書」として最終報告をとりまとめ、平成29年度及び平成30年度一般会計歳入歳出決算に係る不認定の議決を踏まえて講じた措置について議会に報告された。

 この報告での講じた措置について、示された内容を着実に実行するとともに、市議会への適切な対応の下、より一層適正な事務事業の執行に努めていくことが誓われている。さらに、市長及び副市長の給料を減額し、関与した職員の処分及び過大に交付した補助金の返還請求がなされている。また、過去の不適正事案を含め補助金制度全般の運用等補助金交付事務の適正な執行に関して、市は地方自治分野に詳しい弁護士や公認会計士、元検察官で構成する田辺市補助金交付事務適正検証委員会を設置し、検証委員会において「田辺市補助金交付事務の適正執行に向けた検証結果報告書」として取りまとめられ、法令遵守の着実な実行に向けた提言がなされたところである。市では、検証委員会からの意見を踏まえ、組織としてさらに自浄能力を発揮するため、令和2年4月総務課内にコンプライアンス推進係を新設した。市としての取組と今後の対応を引き続き見守りたい。

 この一連の取組は、平成29年改正の地方自治法での内部統制に関する方針の策定及び内部統制体制の整備に通じていると思われる。内部統制制度の導入は、現行では都道府県知事及び指定都市の市長に義務付けられており、指定都市以外の市町村の長については努力義務とされているが、衆議院総務委員会及び参議院総務委員会の改正法に対する附帯決議では、指定都市以外の市町村の長についても、内部統制に関する取組を積極的に推進すべきとされている。

 さらに、この改正地方自治法に基づき、監査制度の充実強化の一環として監査等のより適切かつ有効な実施を図るため、「田辺市監査基準」を定め、これを公表し、令和2年4月1日から施行したところである。

 最後に、財務に関する事務について立て続けに不適正な会計処理が発生したことを鑑み、信頼される市役所を目指して職員が一丸となって再発防止に強い意志で取り組まれたい。また、昨今の新型コロナウィルスの流行による厳しい状況の下であるが、これまで以上にガバナンスの構築に傾注され、職員のコンプライアンスの推進やリスク管理等を徹底し、各担当業務や管理体制を十分に理解した上で今後職務に精励されることを強く希望する。

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最終更新日:202223