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令和2年度 一般会計及び特別会計決算審査の概要

決算審査の概要

 この決算審査は、令和2年4月1日施行の田辺市監査基準(令和2年田辺市監査委員告示第1号)に準拠している。

 令和2年度の一般会計及び特別会計を合わせた総決算額は、各会計の「実質収支に関する調書」によると、歳入総額796億4,383万2千円、歳出総額772億1,892万1千円となっており、前年度に比べ歳入は17.09%増加、歳出も16.40%増加の決算となっている。

令和2年度の特筆すべき事項として、新型コロナウイルスの感染拡大による多大な影響を受けての財政運営により、歳入歳出とも例年に比べ大きく増加している。

 収支の状況を実質収支でみると、一般会計は21億3,888万4千円の黒字、14の特別会計の合計は1億4,291万円の赤字となっているが、一般会計と特別会計の総計では19億9,597万4千円の黒字決算となっている。基金の残高は、前年度より1億8,765万3千円増の242億9,064万1千円となっている。

 一般会計の歳入総額571億4,924万8千円を構成比率でみると、自主財源は24.05%(前年度31.77%)、依存財源は75.95%(同68.23%)となっている。自主財源の根幹をなす市税収入は、市民税(個人)、軽自動車税が増加し、市民税(法人)、固定資産税、市たばこ税、入湯税、都市計画税が減少しており、前年度に比べ1億491万7千円(1.26%)減の82億4,770万7千円となっている。一般会計の歳出総額545億8,142万7千円を構成比率でみると、消費的経費は63.19%(前年度58.06%)、投資的経費は15.63%(同15.34%)、その他の経費は21.17%(同26.60%)となっている。

 令和2年度の普通会計における財政状況を財政分析の指標からみると、財政上の能力を示す財政力指数は0.395(前年度0.377)であり、財政構造の弾力性を示す経常収支比率は97.99%(同97.78%)で、前年度より0.21ポイント上昇している。また、収入の安定性を推測する経常一般財源比率は、96.18%(同97.70%)と1.52ポイント低下(改善)している。地方債の償還に充てた一般財源の割合を示す公債費比率は8.1%(同9.0%)で前年度より0.9ポイント低下(改善)、実質公債費比率は8.8%(同8.7%)で前年度より0.1ポイント上昇しているが、地方債の発行に県知事の許可が必要となる18%を大きく下回っている。

 一般会計と特別会計の収入未済額の総計は10億4,342万2千円で、前年度に比べ1億23万5千円(8.76%)の減となっている。市税や国民健康保険税をはじめ数々の使用料においては、納付指導の他口座振替の推進、コンビニエンスストア並びにスマートフォンアプリでの納付など納付環境の利便性向上を図り、特に市税等では納税推進員による電話督励、夜間延長窓口の開設、さらには和歌山地方税回収機構への税債権の移管や差押えなどの取組を進めていることで、収納率向上に一定の成果が表れてきている。

 しかしながら、税債権以外にも使用料等の債権も含めた収入未済額は多額であるので、コロナ禍による支払猶予などの納付相談も踏まえながら、負担の公平性を保つこと、また貴重な財源確保の面からも、納付意識の高揚に努めるなどし、収納率の向上になお一層努力されるよう要望するものである。加えて、収入未済額の管理、不納欠損の処理といった債権管理についての重要性が増していることから、債権管理条例の策定を望むところである。

 ところで、本市において、森林環境譲与税の交付額は全国屈指であり注目されているところである。この財源は、森林の有する公益的機能の維持発揮を図るための森林整備等の施策に活用していくものとされている。市は、その活用方法について、田辺市森づくり構想策定等委員会を設置し、理念や将来像といった本市が目指すべき森林の姿など構想の策定に取り組まれている。この森林環境譲与税は本市の森林施策を進める上で良い機会である。そしてどういう役割を果たしていくのか、どのように活用していくのか、今後の具体的な取組をどのように展開していくのか注目したい。

 また、令和2年度は、数々の大型事業である景観まちづくり刷新事業をはじめ、扇ヶ浜公園整備事業、斎場建設事業、紀南環境広域施設組合広域廃棄物最終処分場整備事業、防災行政無線デジタル化整備事業など数多くの大型プロジェクトが完成又は施設の供用開始を迎えた。また、前年度から引続き、新庁舎整備事業が進められている。大型ハード事業が完了しつつあることから、今後はハード事業からソフト事業への軸足の転換が進められていくものと思われる。さらに、これ以外にも、社会保障費の増加、多額の公債費負担、産業振興、防災・減災対策、公共施設の更新など多くの重要課題に対応するため多額の財政需要が見込まれるものと考えられる。

 特に令和2年度は、コロナ禍の下、日常生活において様々な活動が制約されるなど、本市においても市民生活に多大な影響を受けている。学校において休校期間があったこと、観光業や飲食業などの業績の落込みをはじめ、開催されるはずであった数々のイベントが中止若しくは延期を余儀なくされた。

 一方、国は「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を閣議決定し、一人につき10万円給付の特別定額給付金給付事業や、地方公共団体が作成した実施計画に基づく新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の交付などの支援策を打ち出した。さらに、国は、「国民の命と暮らしを守る安全と希望のための総合経済対策」を閣議決定し、支援策の拡充を図り、新型コロナウイルス感染症地方創生臨時交付金のさらなる活用を促している。市としても、個人・世帯向けの生活支援、事業者向け支援制度の創設や学校教育支援、地域活性や観光の需要喚起、さらに感染防止に向けた対応などの事業にその財源を活用し、令和2年度内に事業が終了しないものについては、翌年度に財源を繰り越して事業を実施している。交付金を活用して実施した数々の事業に係る効果についての検証は事業の完了後になるものと思われるが、市民福祉の増進を図り、より大きな効果を上げられるよう望むところである。

 今後の事業の実施に当たっては、経済性、効率性、有効性等について検証し、限られた財源の有効かつ効率的な活用を更に図られたい。そして、「第2次田辺市総合計画」をはじめとする各計画に掲げた政策の達成を目指すとともに、「田辺市人口ビジョン」と「第2期田辺市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を踏まえ、中長期的かつ統一的な展望に基づいた安定的な行財政の運営を推進し、市政発展と市民福祉の増進に努められるよう望むものである。

 ところで、過去に不適正な会計処理が発覚したことを発端に、補助金制度全般の運用等補助金交付事務の適正な執行に関して、田辺市補助金交付事務適正検証委員会を設置し、検証委員会において「田辺市補助金交付事務の適正執行に向けた検証結果報告書」として取りまとめられ、法令遵守の着実な実行に向けた提言がなされたことを受け、市として、補助金交付事務のあり方を見直し、厳格化に向けて取り組み始めたところである。

 また、組織としてさらに自浄能力を発揮するため、令和2年4月に総務課内にコンプライアンス推進係を設置された。このように公務員倫理の確立が強く求められている中、綱紀粛正の徹底、公金取扱の厳格化について重点的に取組を加速化していた最中、各種団体等の会計を担当していた職員が長期にわたって不適正な会計処理を行っていた事案が発覚した。市政及び職員に対する市民からの信頼回復に努めている最中にこのような事案がまたしても発覚したことは誠に残念極まりない。もうこれ以上不適正な事案が起こることのないよう、職員全員が公務員としての自覚を持って職務に専念されたい。

 これを機に、公金管理のあり方、加えて各課等で管理している団体のいわゆる準公金の管理のあり方を検証し、通帳、印鑑の取扱いについては、複数人で確認をするなど厳格なチェック体制を確立し徹底されたい。また管理職は、所属の職員が地域などでどのような団体の役員に就任し、その団体において金銭管理などの担当として携わっているのかを把握しておいてもらいたい。たとえ職員は、団体の業務を担当していても、公務員としての自覚を持って、日常の職務と同じものとして取り組んでもらいたい。職員一人一人が地道な取組を続けていくことが、市民からの信頼回復につながるものと考えている。市としての取組と今後の対応を見守りたい。

 この一連の取組は、平成29年改正の地方自治法での内部統制に関する方針の策定及び内部統制体制の整備に通じていると思われる。内部統制制度の導入は、現行では都道府県知事及び指定都市の市長に義務付けられており、指定都市以外の市町村の長については努力義務とされているが、衆議院総務委員会及び参議院総務委員会の改正法に対する附帯決議では、指定都市以外の市町村の長についても、内部統制に関する取組を積極的に推進すべきとされている。市全体として、制度の導入に向けて機運を高め、導入に向けての具体的な取組を望むところである。

 最後に、信頼される市役所を目指して職員が一丸となって強い意志で取り組むことと、昨今の厳しいコロナ禍の状況下であるが、これまで以上にガバナンスの構築、職員のコンプライアンスの推進、リスク管理等を徹底し、各担当業務や管理体制を十分に理解した上で今後職務に精励されることを強く希望する。

 そして、コロナ禍が収束したいわゆるアフターコロナの局面に備え、どのように将来につなげていくのか職員一人一人が展望を持って、先手を打てるような準備を進めてもらいたい。田辺市のキャッチフレーズでもある「未来へつながる道 田辺市」を実現できるよう努力されることを期待する。

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最終更新日:2023118