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市長のコラム

防犯カメラ  (平成20年7月4日)

 6月18日の夜、「牛馬童子像の頭部損壊」というショッキングな報告を受けました。耳を疑いながらも頭部を失った像を想像してみるのですが、あの見慣れた牛馬童子の顔が目に浮かぶばかりです。夜分のことでもあり、翌19日の早朝、現地に向かいましたが、私を待っていたのは、愛着のあるいつもの童子像からは想像もできない姿でした。「熊野古道のシンボルとして多くの人々に親しまれてきた牛馬童子像に、いったい誰が、どんな理由で、このようなことをしたのだろう…。」込み上げてくる想いは、強い憤りを通り越して「情けない」というのか、適当な表現すら見つかりません。これは、単なる「いたずら」といった類いではなく、悪質な犯罪であることを改めて強調したいと思います。
 犯罪といえば、秋葉原での無差別殺傷事件が記憶に新しいところですが、全国的には連日のように凶悪な事件が発生しています。私たちには、こうした犯人の心理状態について、詳しくうかがい知ることはできませんが、これらの凶悪犯と今回の事件に、「犯罪心理上、共通する部分が多少なりともあるのではないか。」と考えることは少し飛躍し過ぎでしょうか。また、凶悪な犯罪もさることながら、丹精こめて咲かせたチューリップの花を蹴散らしたり、理由もなく動物を虐待したり、心が痛む事件が多過ぎると感じるのは私だけではないと思います。いったい原因は、どういうところにあるのでしょう。原因が判らない限り、有効な手立ては講じられません。
 そうした折、最近、犯罪を抑止するための有効な手段の一つに「防犯カメラ」の設置が挙げられます。さらに、その映像を公開することで犯人逮捕に至ったケースも数多く報道されていて、「このエレベーターは24時間遠隔で監視しています。」といった張り紙を目にすることも珍しくありません。「防犯カメラ」は24時間見ているのです。では今後、熊野古道の保全のためにも「防犯カメラ」の設置を検討することも必要なのでしょうか。意見の分かれるところです。
 では、「防犯カメラ」なき時代はどうだったのか、と言いたいところですが、それは愚問で、当時にもちゃんと「防犯カメラ」は存在していました。しかも当時のカメラは、現在の「防犯カメラ」以上の性能で、犯罪抑止効果も今以上であったのではと思います。ただ、呼称は「防犯カメラ」ではなく、「お天道様」と呼ばれていたという事です。「お天道様」が見ている以上、悪いことはできないのはもちろんですが、さらには、もし悪いことをしたら科せられる「罰」についてまで、その大小は別にして「バチがあたる」といって自らを戒めていたのです。それこそ「心の防犯カメラ」の設置について、検討が必要なのかも知れません。
 少し悲観的になりましたが、決して暗い話ばかりではありません。その後には、事件に関する心配の声や、修復に対する協力の提案をはじめ、失った頭部を捜索するボランティア活動まで、それは多くの「善意」をいただきました。本当に救われた気持ちです。改めて、心から深く感謝申し上げますとともに、過去のものだったとする「心の防犯カメラ」の発言を少し訂正させていただきたいと思います。「心の防犯カメラ」は24時間、自らを見つめているのですから。
 

 平成20年7月4日

shomei    

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最終更新日:2022330