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市長のコラム

鳥のうんち  (平成27年6月18日)

 最近発売され、話題になっている「鳥のうんち」をご存知だろうか?「なにそれ?発売?売れるの?」、商品名からは到底売れそうにない。ところがこの商品、ヴィレッジヴァンガードが企画した「第1回雑貨大賞」にて、大賞に次ぐ「優秀賞」に選ばれた。「雑貨大賞」だけに、食品でないことにホッとしながら、評価を見ると「人間が嫌だと思う認識に着目するという、実に冴えたアイデアに思わずうなります。」とあった。
 前置きはこれくらいにして、この商品、実は自転車の盗難防止グッズとして販売されている。単純といえば単純で、自転車を離れる際、サドルの上に見るもリアルな「鳥のうんち」シールを、べったりと貼り付けるというものだ。犯人からすれば、盗もうとする自転車に、本物と見間違えるような「うんち」を発見すれば、犯行には及ばないという訳だ。なるほど、確かにこれは人間の心理を突いている。だが、販売元からすれば、あまり広く知れ渡っては、『どうせシールでしょ』ってバレてしまう。売れて欲しいし、売れれば効果は半減する。痛しかゆしといったところか。
 ところでこの自転車盗、全国刑法犯認知件数の24%も占めている。平成26年の全国刑法犯認知件数は121万2,163件、このうち29万2,221件は自転車盗だ。しかもこれは、あくまでも認知件数だから、実際の件数はこれをはるかに上回るのは言うまでもない。このことは、正に「鳥のうんち」が商品化される背景を表している。
 なお、この「刑法犯認知件数」は、地域の治安状況(犯罪状況)を表す指標で、当然この数値が低い街、イコール「安心して暮らせる街」となる。そこで、「刑法犯認知件数」を下げるために「自転車盗」を減らす。だれでも思いつくところだが、ことはそう単純ではない。
 「自転車盗」は、(1)転売を目的に盗む。(2)移動手段として盗む。(3)マニアによる盗難。(4)パーツを盗む。の4つのタイプに大別されるという。だが、一般的にはやはり(2)の「移動手段として盗む。」が大半だろう。言うところの「チョイ乗り犯」だ。その言葉どおり罪悪感に乏しく、時代劇などで、コソ泥が「チョイと拝借!」と言いながら盗みをはたらく状況が目に浮かぶ。他人の自転車にまたがる時の罪悪感はいかほどか。それこそ「鳥のうんち」を見て、「止めよう」と思うくらいのことだ。
 しかしながら一方で、人には規範意識というものがある。誰もいなくても、「お天道様が見ている」として、自らを律してきた。いや、いない時にこそ、正しい行動を求めてきたのだ。ところが、いつの頃からか、「盗る方が悪いのか、盗られる方が悪いのか」本末転倒の会話が聞かれる。自転車を盗られた我が子に、「きちんと鍵をかけていないから!」と、まるで盗られた方が悪いかの様相だ。当然如何なる場合でも、盗った方が悪いに決まっている。この極当たり前の、「他人のものを盗んではならない。」という規範意識の徹底こそが、今一度求められているのではなかろうか。そういえば近頃気になることがある。殺人などの凶悪犯人が、まったく理由もなく「人を殺してみたかった。誰でもよかった。」などと信じ難いことを口にする。
 こうした最悪の事態に至るまでにすべき小さな取組を疎かにしてはならない。自転車を「そこまでチョイと拝借」という小さな罪の芽を摘むことが、犯罪のない住みよい街づくりには必要だ。自転車盗が減ることは、単に刑法犯総件数を減らすのみならず、それこそ凶悪犯罪そのものを減らすことにつながるものと考える。
 

  平成27年6月18日

shomei   

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最終更新日:2022330