田辺市の地域産品 伝統工芸品
田辺市には、長い年月を経て、歴史と文化、豊かな自然に育まれ、受け継がれてきた伝統工芸品があります。
一品一品に手作りの素朴な味わい、温もり、優れた機能性等があり、私たちの生活に豊かさと潤いを与えてくれます。
皆地笠(みなちがさ)
その昔、源平の戦さにやぶれ、この地方に隠れ住んだ平家の公家が日日の生計を支えるために、この地方に産出する香り高い桧材をつかって笠を編み出し、これが熊野詣での堂上貴紳や庶民に広く愛用された故をもって 貴賎笠(きせんがさ) と称されてきました。
貴賎笠は、その産地の名をとって、またの名を 皆地笠(みなちがさ) ともいわれ、いまもなおその伝統が受け継がれています。
皆地笠は、伝統技術と素朴で肌目美しい桧材を用いて生かした工芸品です。材料である桧の油分が水をはじくため、雨よけ・日よけ共に万能です。また、風を通すので、とても涼しく軽くて丈夫です。桧の香りも魅力の一つとなっています。
実用性と美的価値とを兼ね備えた魅力ある工芸品 皆地笠 ですが、現在、皆地笠を作る皆地笠職人は、ただ一人となっています。
松煙
「松煙(墨の原料となる煤)」の歴史は古く、後白河天皇(1155〜1192)の頃から紀州の松煙が賞賛されていたという記録が残されています。
松煙の生産は、昭和の戦前までつづき、特に最盛期の明治期には三千俵以上も取扱があったと記録されていますが、その後は、時代の波におされ、徐々に姿を消していき、昭和三十三年には終に生産する者が途絶えたようです。
その後、田辺市鮎川の地で、古くから伝わる製造方法による松煙の生産が復活し、現在に至るまで松煙が生産されていますが、その生産者も、現在では、ただ一人となっています。