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市長のコラム

バナナの価値  (平成20年10月8日)

 少し前のことだが、台所の片隅で3、4本ひと括りしたバナナが黒くなっていた。「もったいない」との思いから、わが子に声をかけた。「バナナ、食べへんか?」「いらんよ」、いとも簡単に返ってきた。そうなると、ついいつもの論法が飛び出す。言い出しは必ず「お父さんが子供の頃は・・・」で始まるものだから、聞く方も「また始まった」くらいの調子で、続きは聞いている素振りをしているだけだ。だからといってやめる訳にもいかず、「運動会や遠足のとき、一本のバナナを兄弟で半分ずつ・・・」と、いかに貴重な食べ物であったかを解説する。すると、「お父さん、そのバナナ、いくらか知ってる?」、逆に問いかけがくる。「そういえば最近、バナナを買ったことがないなぁ」などと思っているうちに、「100円やで」、予想外の答えが返ってきた。もちろんこの安さは、広告商品としての目玉価格であると解釈するが、スーパーにも100円均一コーナーがあることを、このやり取りによって知ることとなる。「バナナ価値」は暴落だ。
 それでも、何かいい話はないものかと昔を振り返る。そうだ。例えば遠足のとき、先生が持参できるお菓子の金額などについて説明すると、「先生、バナナはおやつに入るんですか?」こんな質問が飛び出すことも珍しくなかった。もちろん、これはお笑いのネタなどではなく、質問者は実に大真面目で、「バナナがおやつに含まれるとなると、決められたおやつ代の中で、お菓子の割合が少なくなる。だからといってバナナのない遠足などは考えにくい。できることなら、バナナをおやつにカウントしないでほしい。」これは、当時の子供たちにとっては極めて重要な事であり、バナナの存在は左様に大きかったのだ。しかし、この様な話を持ち出してみても、納得するのはこちらばかりで、相手にとってはそれこそ「笑いばなし」の類いに過ぎず、目的である「バナナの価値」の説明には程遠い。それどころか、逆に100円という分かりやすい「価値」の前にこちらが納得をしてしまう始末だ。
 話しは変わるが、先日、家内にバナナを買って来るように頼んでおいた。最近、テレビ放送され話題になった「バナナダイエット」を試みるためだ。ご存知の方も多いと思うが、うたい文句は「朝食をバナナだけで済ませ、眠る4時間前以降は食事を取らない。それ以外は何を食べても効果は得られる」というものだ。家に帰って早速話題を「バナナ」に向けると、視聴者の反応は思いのほか敏感で、各スーパーとも品薄で売り切れに近い状態だという。それにしても改めてテレビの影響力の大きさと、ダイエットに対する関心の高さを思い知らされた。
 ちなみに、肝心の効果のほどだが、残念ながら今なお実感できずにいる。そもそも、バナナを食べるだけで本当にダイエットになるのか疑問で、むしろ「眠る4時間前以降は食べ物を口にしない」の方が効果的ではないかと考えたりする。それよりなにより、効果が見えない理由は単純明快で、恥ずかしながら「バナナのみの朝食」が3日も続かなかったというのが、ことの真相だ。言い訳に過ぎないが、バナナだけの朝食では昼食までの空腹に耐えがたく、あっけなくギブアップ宣言となった。いずれにしてもテレビ放送以来、世の中はちょっとした「バナナブーム」の様相で、今やバナナは全国的に品薄状態というから驚きだ。
 このように「価値」というものは、テレビの影響もさることながら、時代の変遷によっても姿を変える。ましてや、めまぐるしく変化する現代社会においては、まさに「価値観」は「多様化」する一方だ。そうした現状を目の当たりにするとき、前述の「バナナの価値」はさておき、先人から引き継ぐ普遍的な価値観を、次世代へどう繋ぐかは重要な課題だ。「まちづくり」の意味を「地域の価値を創造していくプロセス」とすれば、今後私たちに求められるのは、今まで以上に新たな「価値」を創造するための柔軟な発想力と、いつの世も変わることのない「価値観」を尊重できる感覚を合わせ持つことに他ならない。
 

 平成20年10月8日

shomei  

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最終更新日:2022330