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市長のコラム

選択  (平成26年11月21日)

 私達は日々、大小様々な「選択」に迫られる。それこそ目覚めてから眠るまで、「どの服を身に着けるか」、「昼食はうどんかラーメンか」、「渋滞を回避するにはどの道か」、「今日の天気に傘が必要か」等、「選択」の連続である。これらは「どちらにころんでも」の例だが、時には「どちらにころぶか」で、人生が大きく変わる「選択」もある。また、「選択」に当たっては、選択肢が多く自己決定できる場合は満足だが、選択肢や決定権が小さくなれば、諦めの境地となることもある。
 しかし、自分は主体的な判断に基づき、自由に「選択」をしているつもりであっても、その結論に至るプロセスや自己を取り巻く環境等によって、「選択」の幅が狭められている場合も少なくない。しかも、自由度の高い「選択」が必ずしも満足のゆく結果に結び付くという保証もない。
 なかでも、生涯の伴侶を決める「結婚」は、人生を大きく変える「選択」の一つだ。それこそ「誰に頼るでもなく、自分で決定する。」が圧倒的だろう。しかし、時代を振り返ればこの国でも、戦略的な結婚や「いいなずけ」など、本人の「選択」でない婚姻もあった。さらに現代社会であっても、広く世界に目を向ければ、宗教や風習等によって、結婚式当日まで相手を知らない婚姻も珍しくない。では、その「選択」の違いは、その後の幸せ感にどう影響するのだろう。
 ここに結婚後の意識調査結果がある。恋愛による自由婚と、他者による取決め婚について、50組の夫婦の結婚後の幸せ感を追跡したものだ。それによると、婚姻後1年未満の幸せ感は、自由婚では70点、取決め婚では58点と自由婚の方が高くなっている。ただこれが10年を超えると、自由婚は40点に減少し、取決め婚では68点に上昇しているというから、わからないものである。そう言えば、結婚式が初対面の二人が生涯おしどり夫婦で過ごし、大恋愛の二人が成田で離婚するケースを思えば、「さもありなん」の節もある。「それでは、どちらの「選択」が正しいのか?」の問いが聞こえてきそうだが、その解は「幸せな方」と答えるのが正解のようだ。
 このように、結果により「選択」の良しあしが分かれるとすれば悩ましいところでもある。そうすれば、私達が日々迫られる「選択」は、いったい何を頼りにすればいいのだろう?正しいと言える「選択」をするためには、いったい何が必要なのか?考えさせられるところである。決め手に欠ける点は否めないが、例を挙げ考えてみる。
 世の中には「勘」が良いと言われる人がいる。例えば、「初めて行く街で、夜遅く降りた駅前は灯りも少なくひっそりとしている。しかも空腹で、まずは飲食店を見つけたいのに頼りになりそうな情報もない。」という経験がある人も多いのではないか。しかし、こういう時に、苦も無く店の方に足が向く人がいる。中には「苦も無く」どころか、それを自慢にしている人さえいる。街の様子なのか、匂いなのか、はたまた豊富な経験からか、タネあかしを願いたいものである。
 また一方で、まったく「タネも仕掛け」も無さそうな、それこそ純粋の「勘」もある。いちかばちかの「やま勘」だ。当たるか否かで大違いということにもなるので、もうここまでくると博打の世界となりそうだ。そうは言っても、「やま勘」の語源が、武田信玄の参謀、山本勘助からくるという説もあるくらいだから、人物の違いによって「勘」や「運」の強弱は否定できない。
 ここで山本勘助が登場したので、もう一人紹介したい。日露海戦を勝利に導いた、連合艦隊参謀の秋山真之その人だ。秋山真之から学ぶことは、実に幅広く奥深いだけに、筆者が「どれほどの理解の上で引用したのか」、と問われれば心もとないところだが、かの秋山真之は海戦の最中、「双眼鏡を覗かなかった」という。理由はこうだ。『双眼鏡ははっきりと見える反面、視野が狭い。自分は肉眼で大局を知ればよい』。
 多数の乗組員を預かる艦船の中で、そのリーダーが下す判断のいかんによっては、全滅の恐れすらある。しかも戦闘という極限状態で、状勢は刻々と変化する。そのなかでの判断、つまり「選択」は一刻の猶予もない。戦艦一隻の運命どころか日本の運命をも変えることにつながる、重要な決断に迫られる。その時必要となるのが、「大局を知る」ことだというのである。このことは「選択」、つまり判断力や決断力には、豊富な経験、幅広い知識、加えて大局的な知見が必要だということを物語っている。
 翻って、私達の日々の仕事に目を向ければ、ますます細分化され専門性が求められる時代にある。もちろん、間違いのない判断をするためには、それぞれの担当分野で専門性を磨く必要に迫られる。ただ、そうは言っても、専門性を追求するあまり双眼鏡の例ではないが、「よく見える反面、視野が狭い」となっていないか、心掛けたい。休日の過ごし方、幅広い分野の人との交流、趣味やサークルの活かし方、工夫次第で人としての幅を広げることは可能である。時には他者から見れば一見無駄に思えそうなことであっても、あえて無駄を楽しむくらいの余裕も必要だ。仕事外での幅の広さは、それこそ良い結果に結びつく「選択」を可能にすることにつながるだろう。
 

 平成26年11月21日

shomei   

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最終更新日:20151017